奥州市西部に聳える焼石岳の山間(やまあい)に、特定多目的ダム『
胆沢ダム』がある。通称おざわダムとも呼ばれているが、筆者はその由来を知る由もない。
我が国最大級のロックフィルダム(岩石や土砂を積み上げて建設する型式のダム)として昨年完成したばかりだ。
建設途中にも何度か足を運び、工事の迫力に圧倒されたものだ。
ダム建設の可否の論議については、敢えて触れまいと思うが、何れにしても物凄いボリュームで、迫力満点だった。まず工事用の重機に圧倒された。ダンプカーのタイヤの直径などは人間の背丈ほど、いやそれ以上もあった。もし轢かれでもしようものなら、煎餅のようにペッしゃんこになるに違いない。
今こうして、完成したダム湖を眺めてみると、そのスケールに圧倒されるばかりだが、ただ、ダム工事が始まる以前は、この辺り一帯は非常に長閑で、鬱蒼とした木々に覆われ、深山幽谷の佇まいであった。熊やカモシカは勿論だが、以前あった石淵ダムの湖底やその上流域には、1尺を優に超える岩魚やヤマメが生息し、悠然と游いでいたものだ。
工事による地響きの中、いったい何処に姿を隠していたのだろうか。
440haの湛水面積を誇る巨大ダムの湖水が、経年により落ち着くことによって、何処ぞに、静かに隠れ潜んでいた尺岩魚たちが悠然と游ぐ姿が確認出来る日は、そう遠くないと信じている。
