2007年(平成19年)12月7日、東海道本線共和駅(愛知県)のホームで、当時91才、重度の認知症を患う男性が線路側との遮断の為のフェンスを通り抜け、電車に跳ねられて死亡すると云った痛ましい事故があった。
事故に伴い発生した損害について、JR東海は損害賠償請求の民事訴訟を起こした。
勿論当事者は重度の認知症の為、判断能力は無いに等しい。そのことから民法713条の「精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にあ る間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない」との条文により、本人の賠償責任は問われることはない。
しかしながら次項の第714条の「責任無能力者の監督義務者等の責任」により、JR東海側は賠償責任を家族に求めた。
それを受けて一審の名古屋地裁は妻と長男に対し、請求全額(約720万円)の賠償を命じた。これに対して、二審の名古屋高裁は妻のみに対して約360万円の減額請求を言い渡した。ところが、当時介護、監督にあたっていた妻も85歳の後期高齢者。しかも要介護1の身障者だった。ましてや事故現場となった線路とホームを挟むフェンスの戸が施錠されていなかった。そのJR東海側の管理の甘さも後押しして、不服申立てを行ない、結論は最高裁に係属された。
その最高裁の判決が先日(2016年3月1日)結審を迎え、一審・二審判決の賠償命令を退け、家族側の賠償責任が免れる判決がくだされた。
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